LGBTとALLYのためのHappy Ending CAFE 第2弾 第6回『埋葬編』

【講師】布施美佳子(「GRAVE TOKYO」クリエイティブプロデューサー)

伊藤照男(株式会社アンカレッジ 代表取締役)

 

【テーマ】埋葬

どんな人でも最後はお骨になります。遺骨となった自分はどこへ行くか考えたことはありますか?

また、大切な家族やパートナーのお骨やお墓の管理はどうしますか?

最近は継承者を必要としないお墓や樹木葬や海洋散骨といった新しいお骨の行き先の選択肢が広がっています。

自分らしいオリジナル骨壷ブランド立ち上げの経緯や最新の埋葬事情から変わる葬送の未来とLGBTのお骨の行方について考えます。

 

【レポート】

昨年7月「医療編」から始まった第2弾も最終回「埋葬編」。

私自身は現在のところゼロ葬希望なので“お墓”についてはそんなに興味はなかったが、講義がわかりやすくて面白く、予想外に引き込まれた。

”お墓”は、家制度の名残で本家(長男)が承継していくという慣習が残っていて、「○○家之墓」「○○家先祖代々之墓」などに入ることが出来るのは原則として「家の継承者(長男)とその配偶者」だけとされてきた。しかし、ここ10年程で急速に変化しているという。

変化の潮流としては、1.少子化(一人っ子も多く、男の子がいない場合もある)、2.未婚の増加(男性4人に一人は生涯未婚)、3.イエ意識の希薄化(調査では男の子が生まれない場合に養子を取ってまで◯◯家を残すことに執着するとした人の割合は8%)、4.定住意識の低下(故郷のお墓の維持管理が難しい)、5.そもそも”お墓”は日本の伝統か?

家に男の子が生まれ、その子が結婚してまた男の子が生まれる確率を考えると従来のシステムは立ち行かなくなっていて、イエのお墓を承継していくことが難しくなっている(祭祀財産の承継自体が困難)。埋葬も1980年頃から従来の”お墓”システムから少しづつ変化してきたが、ここ10年で多様化が進んでいる。

主な選択肢として、1.お墓(墓地にあり墓石のあるもの。家族墓、個人墓、合同墓、合祀墓、永代供養墓、etc.)、2.納骨堂、3.自然葬(海洋散骨、樹木葬、etc.)、4.その他(宇宙葬、バルーン葬、0葬、手元供養、etc.)などがある。個人のライフスタイルやニーズに合わせて選択できるようになってきた。證大寺の方から二人専用墓「永代供養墓 安&堵」についての紹介があった。

そもそも”お墓”は”日本の伝統”なのだろうか?という提起。石の家墓を継いでいく文化は家制度(1898〜1947年)が制定された明治時代以降に一般化したもの。代々継承してきたようにみえるが100年ちょっとの歴史なので4代より前になるとどこにあるのかわからないという人も少なくなく、実は”先祖代々”と言えるほどの伝統とは言い切れないのでは?という。

 

この「そもそも〜伝統なのか?」という話、選択的夫婦別姓や同性婚に対する保守派の”日本の伝統的家族観の崩壊に繋がる”論を思い出した。ほんと伝統ってなんだ…。

伝統と思い込んでいる家族観自体が、実は伝統という程の歴史とも言えず、少子化や未婚の増加、家族の形態自体が変化している現代に従来のシステムはそぐわない…既にライフスタイル自体が多様化している訳で、“LGBT”に限ったことではない。

実際、ブルーオーシャンセレモニーが散骨を始めた当初(10年前)は年間5件だった散骨も昨年は500件に。今は散骨もメジャーになったが、元々葬儀、供養業界は超保守的でほんの10年前までは従来の供養形態以外のスタイルに対しては否定的でアウェイ状態だったそうだ。

保守的な人はそもそもこの様な会合に参加しないだろうけど、この会に参加しているエンディング産業従事者は日々多種多様なケースに対応しているからか、多様性への理解力と対応力を感じた。